僕らのガンパレード・マーチ

四国攻防戦 〜円卓会議〜

立ち読み版

作:十羽(野口豊)




地図



「着きました」

護衛の若笠大尉に促されて会合の場所として設営していた湾口詰所に降り立った。

詰所の中にはすでに何人かが到着している様子でこちらを伺っている。

「遅かったな、小早川」

そう言葉を発して陸軍の制服に身を包んだ壮年の男性が近づいてくる。

「久しぶりだな、秋山」

小早川中将が返答すると、秋山と呼ばれた男性は速見、舞、善行の順でこちらをみると

副官に目配せして席を設けさせてから座るようにと促してきた。

「まだ時間があるみたいだから、一応自己紹介をしておいたほうがいいかな?」

秋山と呼ばれた男性はそうきり出すと懐から名刺を取り出して机に置いた。

名刺には「陸軍中部方面軍第14旅団 秋山兼次」と書かれている。

「将校の方から名刺をいただいたのははじめてです」

僕が不思議そうに名刺をみると秋山中将は豪快に笑い出した。

「そうだろうとも。軍人になる前はサラリーマンをしていたから、その習慣で初対面の人間にはだいたい渡すのさ」

「サラリーマン?秋山殿は士官学校出だとお伺いしているが」

舞も不思議そうに秋山中将に尋ねる。

「あぁ、高校を卒業してからしばらくは商社勤めをしていたんだ。その後で士官学校に入学したからな、だから俺の方が歳上なんだが軍歴では小早川と同じなんだ」

「なるほど、興味深いな。」

舞は納得したのか、秋山中将の話を半分以上無視して名刺に興味津々になっている。

「…私も名刺を作ってみるか」

「なら、よい印刷会社を紹介してやろう。こんなご時勢でも納期をしっかりと守る律儀な会社だ」

舞が呟くと秋山中将が話をひろう。

「うむ、それは関心な会社だ。日の本の商売精神はまだまだ健在か」

かみ合っているようでかみ合っていない会話を交わしつつ、舞と秋山中将は名刺について語りだした。

舞と秋山中将の名刺についての講演会が終わる頃には、

招きに応じた軍関係者達が腰を落ち着けていた。

時計回りに陸軍の秋山中将、溝口大佐、長久保大佐、猪口中佐、明鉄重工の柳瀬代表取締役、島津財団の島津本部長、善行さん、海軍の

小早川中将の順で簡易机を挟んで座っている。

「全員揃ったようなのではじめさせて頂きます」

本編に続く




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