「青き光は命の願いー第4集ー」芝村葵プレビュー

 善行の日記より―

 十一月十日。

 私は随分と取っていなかった休暇を取ることになった。
つい先日幻獣の王となったカーミラとの休戦協定が結ばれたためである。

本来なら事後処理で幕僚たる私は方々駆け回らなければならなかったのだが
大原しのぶ日本国首相の計らいにより今は芝村舞中佐の率いる5121小隊への”ご褒美”を
元司令の私も貰えることになったからである。

 ”ご褒美”とは整備班(といってもごく一部の人間)たっての希望であるハワイ旅行だ。
カーミラ曰く「私は海の者達に友達が多いのよ」だそうだ。
まぁ補給線とは関係のない、戦略的に見てもあまり影響のない航路だからこそ尚更だというのもあるだろう。

 出発は明後日。約2週間という奇跡的な休暇を貰えた。
この先何年分の休暇だろうかと不意に考えてしまう。
まぁ実際は半年分とちょっとくらいの休みなのだとわかっていてもだ。

 そして今日はハワイ旅行へ向けての買い物の日となった。

                            

 午前十時。集合場所である忠犬ハチ公の銅像前に奇妙な集団が集まっていた。 
カジュアルな服からゴシックな服まで、個性溢れるといった言葉が当てはまるような若者たちがそこにはいた。

 姉弟喧嘩をする二人、それをなだめるゴーグルをつけた少年。奇妙な制服を着た大柄の男二人。
くねくねと動く白衣の男。それをスパナで殴る女性。軽そうな優男に寄り添うように居る袴の女性。

 道行く人が必ず見ていく。たまに写真を撮られていた。

 善行はそれらが全て日常であるように周囲の全てを無視して口を開いた。

「みなさん、久しぶりですね。時間になりました、それでは買い物へと行きましょうか」

 ぞろぞろと集団は歩いていく。
先頭は善行・原、その後ろに滝川・森、以下諸々が己の想うがままに列をなしている。
これが幻獣の王を倒し日本を救った部隊であるとは誰も思うまいと善行は思った。

「委員長、今日は半ズボンじゃないんですね」

 後ろから滝川が声をかけてきた。

「私だって好きで半ズボンをはいているんじゃありませんよ滝川君」

「そうね、いつもはその時々の女の趣味にあわせてるものねぇ」

 横から女性が刺々しい言葉を放ってきた。整備班長の原素子である。

 「滝川君はダメよ、こんな駄目で意気地なしな男になったら、森さんを泣かせたら
夜道は気をつけて歩くのよ?戦争が終わったとはいえなにが起こるかわからないものー」

 そのまま愚痴モードに入った原は滝川の後ろにいた整備班副班長の森精華を呼び、二人に説教を始めた。

 すまない。と思いつつ善行は滝川たちを囮に、徐々に歩く速度を緩め列の後ろへと移動していった。

                                                                         つづく

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